今回紹介する論文では、健康な高齢男性に250 mg/日のNMNを12週間摂取させたところ、安全で忍容性が高く、NAD+とNMNが有意に増加したとされています。
全血中のNAD+代謝物さらに、NMNは筋力とパフォーマンスの改善を誘導したことから、NMNの慢性的な経口投与は、サルコペニアなどの加齢に伴う筋肉障害の予防に有効な戦略であると考えられるそうです。
Contents
12週間NMNを摂取することで筋肉機能が向上したことが明らかに
英文概要
Preclinical studies have revealed that the elevation of nicotinamide adenine dinucleotide (NAD+) levels on administration of an NAD+ precursor, nicotinamide mononucleotide (NMN), can mitigate aging-related disorders; however, human data are sparse.
Therefore, we aimed to investigate whether the chronic oral supplementation of NMN can elevate blood NAD+ levels and alter physiological dysfunctions, including muscle weakness, in healthy elderly participants.
We administered 250 mg NMN per day to aged men for 6 or 12 weeks (n=21 for 6 weeks, n=10 for 12 weeks) in a placebo-controlled, randomized, double blind, parallel-group trial.
Chronic supplementation with NMN was well tolerated and did not cause any significant deleterious effect.
Metabolomic analysis of whole blood demonstrated that the oral supplementation of NMN significantly increased the concentrations of NAD+ and NAD+ metabolites. Moreover, NMN significantly improved muscle strength and performance, which were evaluated using the 30-second chair stand test, walking speed, and grip strength, and it showed no significant effect on body composition.
Thus, our evidence indicates that chronic oral NMN supplementation can be an efficient NAD+ booster for preventing aging-related muscle dysfunctions in humans.
翻訳概要
前臨床試験において、NAD+前駆体であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NMN)投与によるNAD+レベルの上昇が老化関連障害を軽減することが明らかにされているが、ヒトでのデータは乏しい。
そこで、我々は健康な高齢者を対象に、NMNの慢性的な経口補給が血中NAD+濃度を上昇させ、筋力低下などの生理機能障害を変化させるかどうかを検討することを目的とした。
我々は、高齢男性に1日250 mgのNMNを6週間または12週間(n=21、n=10、12週間)、プラセボ対照、無作為化、二重盲検、並行群間試験で投与した。
NMNの慢性的な補給は、忍容性が高く、重大な有害作用は生じなかった。
全血のメタボローム解析により、NMNの経口補給は、NAD+とNAD+代謝物の濃度を有意に増加させることが実証された。さらに、NMNは、30秒椅子立ち上がり試験、歩行速度、握力を用いて評価した筋力とパフォーマンスを有意に改善し、身体組成には有意な影響を示さなかった。
したがって、我々のエビデンスは、NMNの慢性的な経口補給が、ヒトにおける老化に関連した筋機能障害を予防するための効率的なNAD+ブースターとなり得ることを示すものである。
転載元文献
Masaki Igarashi, Masaomi Miura, Yoshiko Nakagawa-Nagahama et al. Chronic nicotinamide mononucleotide supplementation elevates blood nicotinamide adenine dinucleotide levels and alters muscle motility in healthy old men, 09 June 2021, PREPRINT (Version 1) available at Research Square [https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-455083/v1]
https://www.researchsquare.com/article/rs-455083/v1
NMNの効果と安全性
NMN投与の安全性と有効性を明らかにするために、65歳以上の健康な男性にNMN 250 mgとプラセボ品を12週間投与する比較試験を実施した結果、健康な高齢男性に250 mg/日のNMNを12週間経口投与することで、安全性、忍容性が確認され、有意な増加が認められたそうです。
このNMNの投与で健康な高齢男性の筋力が有意に改善されたことにより、NMNの慢性的な経口投与はサルコペニアなどのヒトの老化関連疾患に対する治療戦略となり得るとの事です。
NMNの様々な可能性
今回のテストで様々なNMNの可能性も発表されています。
その中からいくつかピックアップ紹介させていただきます。
NMNの慢性経口投与は全血中のNAD+および関連代謝物を増加させる
液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS/MS)を用いてNAD+と関連代謝物を分析した結果、NMNの経口補給は、プラセボと比較して、NMNとNAD+のレベルを効果的に上昇させた。
また、NRの増加も観察された。これは、CD7321によってNMNがNRに変換された可能性を示しているのかもしれない。
また、NMNは、NAD+デノボ合成経路の中間体であるニコチン酸モノヌクレオチド(NAMN)およびニコチン酸リボシド(NAR)レベルを有意に上昇させることもわかった。
これらの知見を総合すると、NMNの慢性的な経口補給は、健康な高齢男性におけるNAD+代謝を効果的に促進することが示唆された。
NMNの慢性経口投与により運動機能が改善される
NMNの経口投与により骨格筋量については、いずれの解析でも有意差は認められなかったが、筋力やパフォーマンスを調べたところ、NMN投与後の歩行速度および左握力テストに有意な改善を認めた。
また、6週間と12週間の診察時の各群の平均値の間で歩行速度に有意差が認められた。
さらに、プラセボ群とNMN群の間で30秒間の椅子立ち上がりテストでも有意な差が表れた。
本論文はNMNの継続的な経口補給が健康な老人の筋力とパフォーマンスを改善することを示すものであるともいえるとの事です。